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あなたは何歳まで働きますか?(第3回)

「あなたは何歳まで働けますか?」

タイトルとは少し違う質問です。
もし定年制がなくなり、希望すれば年齢に関係なく働くことができる時代になったとしたら、自分は何歳くらいまで働けそうか考えてみたことはありますか?

勤め人にとって「働く」ということは、会社に労働を提供してその対価(賃金)をもらうことですから、まずは会社の仕事に従事できるだけの体力や気力があることが必須条件です。定年制の延長や廃止、定年後再雇用などといった話題は、社会の制度という観点から語られることが多いのですが、実はこのテーマには、働く人の体力や気力、さらには働くことの意味をどう考えているか、というような個人的かつ内面的な問題も大きく関わっていて、働く人の側の課題でもあるのです。

日本人の平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳(2019年)と延び続けています。いっぽう、健康上のトラブルにより日常生活が制限されないで暮らすことができる「健康寿命」という考え方があり、これは男性72.14歳、女性74.79歳だそうです(2016年)。他人の手助けを受けることなく自立して暮らせる期間のことですから、これが働ける期間といえるでしょう。この数字を見てどう感じますか? 残りの健康寿命が意外と短いことにちょっと愕然としたシニア層の方も多いのではないでしょうか。

「寿命」というと天から与えられた運命的なものだと考えがちですが、特に健康寿命は自身の努力によって延ばすことが可能です。長く元気で働き続けたいのであれば、体力や気力を少しでも高い状態で維持する努力がとても大事になります。しかしシニアの仲間入りをしてからそのことに気がついても残念ながら少し遅いかもしれません。できるだけ若いうちから健康状態を維持、向上させる習慣を身に付けたいものです。従業員の健康管理を経営的な視点で捉える「健康経営」という考え方がわが国でも広く浸透してきましたが、このことも健康寿命の延びに貢献しそうです。

定年制の廃止

健康上の課題とともに、働くことは自分にとってどんな意味があるのかという、働く人それぞれが持つ労働観も働く期間に影響を及ぼすでしょう。日本人は一般的に労働に対する価値観が高く、家族のため社会のために額に汗して働くことは美徳、働き者は立派な人、というような考えがあります。だから人間は働けるうちは働き続けるべきだ、と考える傾向があるようです。

これに対して欧米人などは、働かなくても生活ができるだけの年金や貯蓄を手に入れたらできるだけ早くリタイアしたいという、ハッピーリタイア願望が強いように感じます。古代や中世のヨーロッパでは、労働は神から与えられた罰であり人間にとって苦しい活動である、と考えられていたそうですから当然でしょうか。欧米諸国では定年制がとっくに廃止されたからといって、みんな70歳代や80歳代になるまで働いているとはとても思えません。データを調べたわけではありませんが、日本よりも欧米のほうがリタイアする平均年齢はかなり若いのではないでしょうか。

65歳までの雇用確保の義務化に続いて70歳までの就業機会の確保措置も法制化されました。これからは60歳代後半の労働者も増えてくることは明らかです。しかしその中には、会社の期待通りに働くことがもはや難しい人もいるはずです。かといって能力不足を理由に解雇することが難しいわが国ですから雇用は守られてしまうことになり、いずれは「働かないシニア」問題が顕在化すると私は予想します。

シニア労働者はこれからの社会に貢献することが期待されています。それを実現するためには社会制度の変革だけでは足りず、働く人一人ひとりが自分を高める努力をすることも求められているのだ、ということを認識しなくてはならないと思います。

働ける限りは何歳まででも働きたいと考えているあなた、いまからそのための準備をしていますか?

(第3回/全5回)2021年6月18日

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